「経験も地盤も0の状態から、トップ5の当選へ」

「経験も地盤も0の状態から、トップ5の当選へ」

1期目の市議会議員の挑戦時、地盤がなく、支援者も少なかったという森こうじさん。「最下位でも良いから滑り込みたい―」という想いで立候補した結果、開票してみると全体の5位という高い評価を得て、初当選を果たしました。準備期間はただただ動き続けた、という森さんだからこそ知る、選挙を戦う上で大切なことは何でしょうか。その秘訣を教えてもらいました。

インタビュー内容

    あま市市議会議員になるまでのご経歴を教えてください。

    高校卒業後、企業に所属し、サッカーの実業団選手として活動しました。その後地元に戻って、建築関係の仕事に就き、その後独立。建築業を営みつつ、あま市市議会選挙へ立候補することになりました。私は幼い頃からサッカーをしていて、地元に帰ってからもクラブを立ち上げ、活動していましたが、その団体が体育協会に所属することになりました。そこで私が若手のリーダーとして、何かスポーツの振興に貢献できることがないかと考え、立候補しました。また建築業の仕事では、トイレやお風呂を設置する仕事をしていましたが、阪神大震災や東日本大震災など、被災がある度に現地入りし、仮設住宅の建築に携わりました。その経験から「地元で同規模の災害が起きた時、自分には何ができるか」を考えるようになったのも、議員を志したきっかけの一つです。

    立候補するにあたって、迷うことはありませんでしたか。

    実は4年前、1期目の当選を果たすさらに4年前も、立候補しないかと、声をかけていただいたことがありました。その時はあまり実感がなく、見送ったのですが、それから議員になる道も考え始め、周囲に自分の考えを伝えるようになりました。しかし当初、家族からは大反対。しかし自分の気持ちや想いを伝え続けることで、家族も徐々に応援してくれるようになりました。地元はあまり若い候補者を応援する空気ではありませんでしたが、サッカーの若い仲間を中心に、多くの方が支援してくださったので、それほど立候補への迷いはありませんでした。

    選挙の準備を開始したのは選挙のどれくらい前からですか。

    4年前、1期目の選挙に挑戦した時は、選挙の8か月ほど前から準備を開始しました。

    8か月も前から準備すると、ペース配分も大切だと思います。長丁場を乗り切る秘訣を教えてください。

    正直、8か月の中で中だるみした時期もありました。選挙活動を進めると、「次の選挙にあの人が出るらしい」という噂が出て、それが腫物に触れるような雰囲気となり、何か悪いことをしているような気分にもなりました。現職の議員への配慮もあったのでしょう。どちらかと言うと「頑張れ」という方よりも、「知らないふり」をする方の方が多かったように感じます。良くない雰囲気に飲まれそうになり、選挙の3~4ヵ月前は身心ともに疲れてしまいました。ただ、それでは直前から選挙活動をスタートした方が良かったかと言うと、そうではないと考えています。私には地盤もありませんでしたから、まずは早いうちに自分を知っていただくために、8か月前から準備を始めておいてよかったと思います。中だるみをしていたら現職の議員や他の候補者に追い抜かれることが目に見えていましたので、精神的に自分を奮い立たせ、中だるみを乗り越え、できる限り街頭に立ったり、地域の方々とお話ししたりするなど、常に動きを止めないように意識しました。

    選挙準備を始めるのは、早い方が良いとお考えですか?

    これから立候補を目指す方には、それぞれの選挙活動の方法があり、一概に何が良いかは言い切れませんが、私のように自分がやり遂げたいことの想いが強いタイプの候補者は、早めに選挙活動をスタートし、どんどん露出することが大切ではないでしょうか。反対に地元の推薦で立候補する方は、年明け頃からの準備でも問題ないと思います。私は結果的に当選しましたが、中だるみをせず、進み続けることが大切だったと、今になっては思います。これから選挙活動をする方は、ぜひ時間を無駄にすることなく、とにかく動き続け、地域の皆さんに自分を知ってもらえるよう、努力してほしいと思います。

    支援者はどのように増やしていきましたか。

    前述の通り、私の場合はとにかく、自分の強い想いで走り切った選挙でした。そのため、支援者を増やそうとするより、まずは自分が動き続け、私のことを知っていただくことに注力しました。最初はサッカー仲間の若手だけで選挙対策をしていましたが、地域の方が私のことを知ってくださるにつれ「仕方がない、応援してあげよう」と思ってくれたのでは、と感じています。また直前に地元に影響力のある方が数名、協力してくださることになり、それが結果的に得票数につながったのではと考えています。

    選挙活動で重視すべきポイントは何だと思いますか。

    一番大切なのは、自分の名前と存在を知ってもらうことだと思います。私は選挙用品ドットコムさんに、リーフレットを作成してもらいましたが、有権者の方にとにかくたくさん配りました。そして地元の様々な場所で街頭演説をし、地域の方と色々とお話しをし、とにかく露出を高めることを重視しました。そうすると選挙活動を続けるにつれて、たくさんの方が私の話に興味を持って聞いてくださるようになりました。初めて立候補する方はまず、ご自身を知ってもらう活動に注力することが大切だと思います。

    どういう経緯で選挙用品ドットコムにご依頼くださいましたか。

    インターネットでの検索で、選挙用品ドットコムさんを知りました。私は選挙活動中も建築関係の仕事をしていましたので、選挙前であろうと、いただいた仕事をこなさなければなりませんでした。そのため正直、一からすべて自分で選挙用品を準備する時間の余裕がありませんでした。実際に地元の印刷屋さんに頼むとすれば、店舗に足を運び、何から何まで自分でオーダーしなければなりません。しかし選挙用品ドットコムさんの場合、メールや電話でスムーズにコミュニケーションが取れ、イメージするものを伝えただけで、そのイメージに合った候補をスピーディに仕上げてくれました。そのため作業効率が非常に良く、ほとんどの工程を選挙用品ドットコムさんにお任せすることができました。

    選挙用品の重要性をどのように考えていますか。

    選挙用品は、なくては当然選挙を戦うことができません。しかし、選挙の在り方がだんだん変わり、選挙用品も時代とともに変わってくると考えています。例えば個人情報保護法が日本に浸透してから、名簿の回収がされにくくなっています。そのため今後、リーフレットの使い方が変わってくる可能性もあると思います。名簿としてお名前や住所を書いていただくだけではなく、コンパクトに、ご年配の方にも読みやすいフォントサイズで、政策的なことを訴えたり、発信したりするものに変わっていくのではないでしょうか。時代とともに変わりゆく可能性のある選挙用品に、候補者それぞれが特徴を出していくことが大切だと思います。

    選挙活動中や選挙期間中、つらかったことはありませんでしたか。

    選挙中の1週間は落ち込んでいる間もないほど、あっという間に時間が進んでいきますが、事前準備をしている時は、つらい時期もありました。1期目の選挙の時は、獲得できる票数の予想が立たないので、とにかくずっと不安を抱えていました。「最下位でも良いので滑り込みたい」と祈るような気持ちで選挙活動をしていました。そのためリーフレットをたくさん用意したのですが、回収がほとんどできず、後援会に入会してくださる人数が思った以上に少なかったのです。その状況を見ると余計に不安に感じましたが、これから立候補を考える方には、そのようなつらい状況にも持ちこたえることが鍵だと思います。諦めずに最後まで選挙活動をやり切ることで、評価を得たり、応援してくれたりする方が増えるかもしれないからです。

    これから立候補を考える政治家志望者や、若手政治家にメッセージをお願いします。

    しっかりと、地域や国をどうしていきたいか、強い想いを持った方が、政治の世界にチャレンジすることを願っています。ただ票を集めるためであれば、「あれも」「これも」実現する、と訴える方もいます。しかし事実として、一人の議員ができることには限界があります。そのため「これだけは絶対に実現する」と強い心で政治家を志し、世の中に訴えかけていく候補者が増えれば良いと思います。そういう方が増えれば、地方議員が国を変えることも可能だと考えています。

    今後の取り組みや目標を教えてください。

    実は私は日本ブログ村のランキングに参加しており、市区町村の地方議員の中で、ランキングポイントが1位の状態を維持しています。そのブログは、議員の地位の向上や、議会の透明性を高める目的で、ほとんど毎日更新しています。例えば一般の方々に「議会は必要か」というアンケートを取ったところ「議員は必要かもしれないが、議会では何を審議しているか分からないので、必要ない」という声が圧倒的に多いです。そして政治家のスキャンダルの情報がインターネットやSNS上で流れ、議員という職業自体をあまり良く思っていない方も少なくありません。そのため議員が普段どのような活動をしているのかを可視化し、情報発信するように努めています。政策的なことをブログで訴えることもあれば、私も皆さんと変わらない一般市民であることを知っていただくため、日々の出来ごと、例えば散髪に行ったことなど、面白おかしく書いています。

    またあま市だけでなく、全国的な問題にも向き合い、国の政策についても勉強し、分からないことがあればすぐに現地へ足を運びます。地元で活動するのはもちろんですが、もう少し広い目線で政治をとらえ、国内全体の問題にもコミットしながら、地元にも貢献する議員であり続けたいと考えています。そして何より、住民の方々と近い存在であることが大切だと考えています。常日頃から住民に寄り添い、しっかりとコミュニケーションを取り、地域の皆さまが頼れる政治家であり続けたいと思っています。

    お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

    【編集後記】
    「スポーツが自分を育てた」という想いがあり、スポーツを通した教育、スポーツの振興に熱い想いを持つ森さん。あま市のみならず、日本全国の課題にも目を向け、地方から日本を変えていこうという高い志をお持ちであることを、取材を通して強く感じました。現在2期目として精力的に活動する森さんが、何を成し遂げ、どのように地域貢献されていくか、今後の活躍に注目です。