「人を集めるには、まず、自分の思いを訴える」

「人を集めるには、まず、自分の思いを訴える」

(写真左より) 民主党衆議院議員 阪口直人氏、橋本市議会議員 たき洋一氏、(中央)橋本市議会議員 松本健一氏  和歌山県橋本市に越して来て9年。地縁・コネなしで2010年3月に立候補し、初当選された橋本市議会議員 松本健一氏にお話を伺いしました。

インタビュー内容

    1、政治に興味を持つきっかけは、行政への疑問

    政治に興味を持たれたきっかけは?

    和歌山県橋本市議会議員     松本健一氏

    行政の対応に疑問を持ったことが、政治への興味の入り口となりました。
    私が現在住んでいる和歌山県橋本市は、2006年3月に旧橋本市と高野口町とが合併して誕生した市です。
    その合併の際に広域ゴミ焼却場建設が地元住民の理解を得ることなく推し進められていたことを知り、この行政の対応に疑問を感じ、市政について関心を持つようになりました。
    さらに2007年に検討されていた幼保一元化(幼稚園と保育園の一元化)についても、住民との話し合いや意見交換なしに話が進められていくことに疑問を感じました。
    そこで地域のお母さん達と署名活動を行い、市長に手紙を送りました。
    行動を起したことが、政治に対する関心をさらに高めることにつながったと思います。

    2、声をあげることの大切さを知り、出馬を考えるように

    出馬を決める前に会社を退職されたのは?

    退職したのは橋本市で起業したいと考えていたからです。
    私は2009年10月に15年間勤めていた会社を退社しました。それまで日本国内を飛び回り、カヌーの安全普及活動や地域振興を行う仕事をしていましたが、全国各地を見て回るうちに、他の都市に比べて橋本市の地域振興が遅れていることを肌で感じました。
    そこで、自分が今までやってきた経験と能力を橋本市の地域振興に役立てたい考え、起業を決意。しかし、実際に起業をしようと行動を起してみると、そこにも行政への疑問が存在していました。
    行政や外郭団体と折衝しても、前向きな回答がもらえず明るい展望が見えない、時間がかかりすぎるなど、自分の中で橋本市の行政への疑問がますます顕著になったと思います。

    出馬を考えるようになったのは?

    子どもの車椅子が、この市に全くなかったことがひとつの転機になったと思います。
    当時、子どもが大たい骨の病気ペルテス氏病にかかり治療中で、車椅子が必要でした。しかし子供用は全く用意されていませんでしたし、大人用も不足していました。
    私は車椅子をレンタルできる都市があることを知っていましたので、社会福祉の担当部署にかけあい、半年後にやっと導入にこぎつけることができました。車椅子レンタルの導入は寄付金を頼りにしているところもありますが、用意できないわけでもありません。
    声を上げることが大切なのだと、ひしひしと感じました。

    3、「一緒にがんばって行きましょう」の一言で出馬を決意

    出馬しようと決意されたきっかけは?

     橋本市議会議員 たき洋一氏と

    議会を傍聴した後に、橋本市議会議員 たき洋一さんから声をかけていただいたことで出馬を考えるようになりました。
    私は、行政に対して疑問を持ち始めてから、議会を傍聴しに行くようになりました。その傍聴していた議会後に、たきさんと市政についてお話する機会に恵まれたのが2009年9月頃です。
    そこで「これからの街づくりは声をあげていかなければならない」「一緒にがんばっていきましょう」と声をかけていただき、出馬をすることを心に決めました。

    出馬に際して心配だったことは?

    大きな心配や不安はありませんでした。
    自分で決意してから、そのことを家族に話し、1日かけて話し合い、出馬を具体的に決めました。
    もともと事業を起すことに同意してくれていた妻は、起業が政治に変わっただけとの認識で、家族からの反対はありませんでした。
    あえて心配だったことを挙げれば、人とのかかわりあいですかね。地方は人付きあいの密度が濃いので、家族の友人関係も含めて、人間関係が変わってしまうのではないかということが多少心配でした。杞憂でしたが。

    4、人を集めるには、まず自分の思いを訴えることが大切

    選挙の準備について

    私は2001年に大阪府大東市より引っ越してきました。約9年前です。
    だから、地縁・コネなし。「それでよく出馬したね」と言われたこともありました。

    民主党の公認をどのようにしてもらいましたか?

    民主党の公認は候補者公募に応募していただきました。
    なぜ民主党なのかといえば、以前から講演会や街頭演説では民主党の旗をたてている方の訴求内容が自分の考えと近いと思っていましたから。
    実は、行政に関して疑問をもっていた私は、橋本市の行く末について、ご意見を伺いたいと思い、自分の思いを綴ったメールを民主党のたき洋一さんに送ったことがあります。
    それがきっかけで、直接会って話しましょうということになったのですが、そのときに一緒にがんばりましょうと、補欠選挙があることと、民主党の候補者公募があることを教えていただきました。 そこで早速、民主党の候補者公募に応募。応募には経歴書のほかに小論文の提出が必要なのですが、心に抱いていた自分の思いを小論文として書き綴り、県連に承認をいただき、民主党の公認となりました。

    人はどのように集められましたか?

    特定の誰かにお願いはしませんでしたが、アピールはしました。
    人を集めるには、まずは自分の思いを伝えることが先決だと考えていましたから。
    だからそのために、街頭活動をずっと続けていました。
    私は特定の支持団体もありせんので、後援会は街でお会いした方々やご近所の方々、党や大学校友のみなさんを中心としています。特に誰かにお願いをしたというわけではなく、応援してくださる人が新しい人を紹介してくださったりして集まっていただけたという感じです。
    自分の思いを訴えているうちに、ご近所の方や市外の元会社関係の方までが応援してくださるようになり、自然と人が集まって、手伝っていただけるようになりました。
    だから人を集めるには、まず自分の思いを訴えることが大切だと思います。

    街頭演説はどのようにやられていますか?

    街頭演説は橋本市議会議員のたき洋一さんが以前からずっとやられていたことだったので、最初はたきさんと一緒に辻立ちしていました。
    しかし2人だと、アピールする時間が半分になってしまうので、日にちをずらして、同じ場所に2人交互に立つようにしました。
    街頭演説は6時半から8時に行っています。

    辻立ちで大切なことは?

    大切にしていることは、挨拶ですね。
    通行人の姿を確認したら、まず明るく元気に挨拶をします。
    そして次に大切なことは、話の長さです。
    話の一部しか聞いていただけないようでしたら、訴えたい内容も伝わりません。
    だから「人が通り過ぎるまでの間で伝えられる文章」の長さを意識しています。
    短い文章を、何パターンも用意し、それを組み合わせることで、長さを調節することも可能です。
    またその地域、地域にあった内容で組み合わせることもできます。その地域で一番興味をもてる内容になるよう心がけています。

    注意すべき点はありませんか?

    夜の街頭演説は注意が必要ですね。夜間は大きい音が近隣住民の迷惑になってしまうこともあります。かといって音量を絞ると道行く人に訴えが届きません。
    私は12月の夜間に街頭演説をしたことがあります。マンションが隣接していて音の大きいマイクは使えないし、真っ暗な場所だったので、夜の演説は逆効果だと実感しました。それ以来辻立ちは朝です。
    実は、夜は効果があまり期待できないことは以前から知ってはいましたが、私はトライ&エラーを信条にしています。
    だから自分で試して納得した結論です。

    街頭演説(写真左) 橋本市議会議員 たき洋一氏、(中央)橋本市議会議員 松本健一氏、(右)民主党衆議院議員 阪口直人氏
    (注)自治体によってはPRグッズの使用が制限される場合があります。詳しくはお問い合わせください。

    辻立ちでのアドバイス

    最も大切なのは「誰が何をやっているか」がきちんとわかること。
    「誰が」を知らせるには、名前をきちんとアピールすることを意識したほうがいいと思います。目立っていても「誰が」やっているのかわかってもらえなければ効果はありません。また見通しの悪いところ、工事などを行っているような狭い道などでは通行人に配慮するなど、場所ごとに辻立ちのスタイルを変えることも必要です。場所に合わせた臨機応変な対応で名前をアピールすることが大切だと思います。

    「何をやっている」を知らせることについてですが、これにはコードつきメガホンマイクが最適だと思います。ワイヤレスマイクですと同じ場所に何人かいた場合、混線してしまって誰が何を言っているかがわかりませんからね。(ワイヤレスマイクはタクシーやパチンコ店の音を拾ってしまうこともあるので、無線チャンネルには注意が必要です。)

    5、選挙用品は「納期の確実性」と「費用対効果」で選ぶ

    なぜネットで注文されたのですか?

    ネットで注文したのは時間を有効に使いたかったからです。作業は夜、行いました。夜を作業時間にあてることで日中が有効に使えます。
    選挙準備は時間がいくらあっても足りないと感じるほどやらなければならないことが多く、時間の有効な使い方がひとつのポイントです。だから日中をフルに活動にあてられるよう、ネット注文にしました。
    インターネットでの注文なら24時間いつでもOKですから。もし、営業時間の限られたお店に発注していたら、日中打ち合わせをすることになります。しかし用品の打ち合わせ電話がかかってきても、街宣中や皆さんとのお話中に電話には出られません。
    だから自分のペースで作業できることが一番です。
    その点ネットでしたら、自分の都合の良い時間に依頼もチェックもできます。

    選挙用品ドットコムを選ばれたのは?

    ネットで選挙用品を扱っているところを何件か当たってみました。
    その中で、「納期が確実」であり「早い」こと、「費用対効果」などを勘案して選挙用品ドットコムさんに決めました。やはり選挙は日にちが決まっていますから、納期の確実性は大切です。遅れてしまっては元も子もありません。
    途中でポスターのテスト刷りをチェックさせていただきましたが、質がとても良かったので選挙用品ドットコムさんへの注文に不安はありませんでした。また対応もスピィーディで的確でしたので、安心して頼めました。
    ポスターの後、追加注文したたすきは、注文日が告示まで1週間を切っていました。急いでいたので、依頼は口頭でしたが、こちらもとてもスピーディーに手配してくださり、助かりました。
    選挙用品ドットコムさんで作成した用品の出来具合はもちろんのこと、対応やスピードにも満足しています。

    選挙ポスター作成について

    選挙ポスターは、インパクトよりも長い時間掲示されることを想定して作成しました。
    ポスターは、自分がやりたいことを訴えるツールになります。
    多少変化球なのですが、私は見るのではなく、読んでもらえるポスターを目指しました。
    それゆえ一般的な選挙ポスターよりも文章が多めですが、ある程度の距離でも、近くでも見えるよう配慮されています。
    作成する際、先輩にアドバイスいただいたのは、はがきやチラシと同じデザインにして、一目で同じ人のものだとわかるようにデザインを統一すること。だからはがきなどと同じ色、フォントで依頼しました。

    【松本流選挙ポスター】名前と顔を覚えていただくために写真については顔部分を大きく掲載し、名前の余白をすっきりさせました。キャッチコピーも目立つように緑のフチを入れ、文字を大きく見やすくさせています。

    6、市議会議員となって

    当選が確定したときはどうでしたか

    正直ほっとしました。締め切り直前に立候補の手続きをされる方が出てくるかもしれませんから。牽制の意味でも政治活動をがんばりました。無投票当選が決定したとき、家族を含めて周りの人はとても喜んでくれました。

    当選後初めて議会に行かれたときのお気持ちは?

    緊張はしませんでした。それよりも、発言できる権利が得られた喜びと、同時に責任を感じました。

    議員となって一番変わったことは?

    発言の重みが違います。自分の発言で誰かに迷惑をかけてしまうことがないよう配慮するようになりました。

    1日のスケジュール

    週3回朝6時半から8時まで駅前に立ち、その後自宅事務所に帰ります。早朝からの集まりや日中の勉強会や集会に、夜は会合に出席することが多いですね。また空いている時間をみつけたり、地域の方からの相談を受けて各施設の担当者の話を聞くようにしています。事務所が自宅の分、会社員のときよりも家族と一緒の時間が増えましたね。

    これから出馬される方へのアドバイスは?

    大切なのは興味をもって地域活動や生活、仕事に取り組むこと。
    日々生活の中でもアンテナを張って問題を敏感に感じ取ること。
    これらを実践していれば、話す内容に事欠きませんし、皆さんが興味を持てる話題を提供することができます。
    また、大前提として、法律を守ることは大切です。そのためには法律を知らなければならないので、勉強することも欠かせません。
    常日頃からあらゆることに問題意識をもったアンテナを張っておくこと、勉強することが大切だと思います。

    7、松本健一氏 プロフィール

    2010年3月、公選法違反で当選無効になり欠員1人が生じていた橋本市議会議員の再選挙で、民主党公認の新人として立候補し無投票で初当選。橋本市をさらなる魅力ある町にすべく、自慢できるところを積極的にアピールする地域興しの活動に力を入れています。現在ビブワクチン(*)の予防接種公費負担実現に向けて取り組んでいます。

    (*)【ビブワクチンとは】致死的かつ重い後遺症の危険性がある細菌性髄膜炎を予防するワクチン。日本では自費接種だが、先進国の多くが公費負担での予防接種を行っている。

    1966年12月大阪市天王寺生まれ
    大阪府大東市で育つ
    1993年 3月関西大学商学部2部卒業
    働きながら1年間ニュージーランドで暮らす。 カヌー(ホワイトウォーターカヤック)、ダイビング、トレッキングなどを体験
    1955年 3月アウトドアメーカー モンベルグループに入社。 イベント部門統括担当主任としてカヌー安全普及活動に携わる。また、 奈良県五條市営宿舎のリノベーション事業や地方との連携活動に取り組む
    2001年 6月橋本市へ転居
    2009年10月アウトドアメーカー退社
    伊都橋本地域活性化活動を始める
    2010年 3月7日再選挙で無投票当選
    橋本市議会議員となる

    松本氏の熱心な政治活動がライバルの出馬断念を導き、見えない戦いを制したと言えるかもしれません。日々「やってみること」を大切にされトライ&エラーをも厭わないからこそ、体験から導き出されるお話には説得力があるのだと感じました。
    松本様、本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
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    ※ 取材日時 2010年4月