出馬の経緯
三期目のご当選ということで、三期目に挑戦しようと思った理由は?
私の場合には、町議を続けない理由がなかったんですね。
一期目、二期目と経験して、後援会や応援してくださる方も「当然三期目もやるんでしょ?」という雰囲気でした。それで自然と三期目の選挙を迎えることになりました。
三期目の油断?!
選挙を終えてみて、どのように感じましたか?
当選できたことは、とても嬉しいことでした。
ただ正直なところ、今回の選挙は当選順位を落としたのでショックな気持ちの方が大きかったです。一期・二期は上位当選でしたが、今回は前回の倍は順位を落としました。振り返ると反省点が多いですね。
何か、これまでの選挙とは違うことが起こったのでしょうか?
大きく分けると2つありました。
一つには、定数からくる「大丈夫」の言葉に根拠のない余裕を持ってしまったことですね。
今回の選挙は、立候補者に対して、定数が1多いだけでした。つまり落選も1人だけだったんです。「あなたは大丈夫だから!」「万が一にも落ちることはないでしょう」という雰囲気が、私より先に私の周りにありましてね。後援会もゆるゆると言いますか、あまり動かないというか、危機感がなかったんです。町議を二期、経験しているからなんでしょうかね。
二つ目には、私の支援者が限られてしまったことでしょうか。
私の政党からは私を含めて3名が立候補したのですが、前回の選挙で私以外の若手2人がギリギリでの当選だったんですね。それで、今回の選挙ではその2人に政党の力が注がれますし、皆がそちらを優先的に応援するわけです。内心「まずいな」と焦るものの、そちらに人員が割かれているので、実際にはどうすることも出来ない部分が多かった。
そういった背景もあって、何人かとは「いやー…、危ないかもしれないぞ」と話していました。でもそれも、落選は1人だけ、という数字から最後は「大丈夫、大丈夫」という空気に飲まれるんですね。ついには私自身もそういう気持ちになってしまった。
「町議として活動してきた」という自負とはウラハラに・・・
落選の可能性もありながら、なぜ大丈夫な気持ちが生まれてきたのでしょうか?
私に「町議として活動してきた」という自負があったからです。胸を張って、きちんと議員の仕事をしてきましたから。
これは違うと思えば相手に臆することなく反対討論なんかもしまして、共感を得た方から応援の電話がきたりもしたんです。たくさんの人に応援して頂きましたし、直接応援の電話も頂くことも多くありました。結果的に私の意見は通り実現しましたし、私としては「町議としての活動をきちんと継続してきた」という気持ちが先に立つんですよ。有権者は見てくれていると思っていました。
なので余計、当選順位が下がったことがショックでしたね。
とても教訓めいたご経験ですね。選挙に向けては、どのようなご活動をしたのでしょうか?
若い方にポスティングしてもらったり、事務所で留守番をしてもらったり普通の選挙運動をしました。
限られた活動の中でも、せめてリーフレットは多く配りたいと思って、今回は今まで一番多い5000枚作りました。
一期目は500部くらいしか作らなかったんですね。二期目は2000部くらいだったので、今回は数を多く刷ったんです。
選挙区内内に9000世帯ほどありますので、自分の地元中心に見てもらおうと思ったときに、半分以上は配れたらいいなと思いました。
ただこれも、ポスティングを手伝ってもらったものの、自分ではあまり歩かなかったんですね。忙しい時間が続いて時間を割けなかったことと、運悪く足を痛めてしまって動きにくくなってしまって……、自分でもだらけてしまったんですね。結果的には「まぁいいか」という気持ちになってしまった。これも反省点ですね。
地元の方にも応援してもらいましたが、町議ならではの少し独特な地域かもしれないですね。
町から離れて山間にある選挙区は約5キロ四方の約2万人程の地域です。私の「地元」に絞ると世帯は100もなく、有権者は200人ほど。近所にも親戚が住んでいて、顔見知りがほとんどですよね。本家もすぐそばにある。そういうぎゅっと凝縮した地域なので、一期目の時には、地域からの立候補者が30年ぶりと、今までにないぐらいその地域が盛り上がったこともあり地域をあげて応援してもらいまして、その地域だけで投票率が97%を超えたぐらいです。一期目はその熱量が上位当選に繋がったのだと思います。
二期目も、一期目に比べればやや穏やかな支援でしたが、それでも一期目と変わらない順位でした。変わらず応援して頂いたことを感じましたね。このときは投票率が少し下がっていたんだったかな。
それで今回三期目ですが、一期・二期と比べて、倍は順位が下がった格好です。
うーん、やはり地元は大事ですね・・・。
本当に怖い 選挙の「大丈夫!」!?
順位の予測はされていたのでしょうか?
予測というか、今回は立候補者にも色々ありましてね。混戦するかなとは感じていました。
町長経験者の息子さんが地盤を継いで出馬したり、革新系の強い町ということもあってそういった意志を持った方というのも複数人立候補していました。それと別に県議に関わるご家族が出馬したりと、票が流れて得票が難しい状況でした。
そんな中でも私は、耳が痛くなるぐらい「大丈夫」と言われていましたよ。ですから、前回よりそれほど票を落とすことはないだろうという期待をなんとなくしていたのですが、実際には違ったわけです。
選挙後は、周りの方からどのような反応がありましたか?
中心となって支援してくださった方には「引き締めなきゃ駄目だなぁ……」と言われましたね。でも別の人からは「みんなをまとめるには、このぐらいの順位でいいんだよ!あまり上位に入ると恨まれっから!」なんて言われたりしてね。私から逆に言わせてもらうと、「そんなこと言って、ちゃんと応援してないでしょ!」という気持ちにもなってしまいましたね(笑)。
うーん。みなさん、言いたいことを言われていまして、まとめるのも大変でしたね(汗)
準備はいつごろから始めたのですか?
選挙の三ヶ月ほど前から徐々に選挙を意識して、一ヶ月ぐらいからまえから本腰を入れてという感じでした。
みなさんもう、私の名前を知っていますから「いつもどうもありがとうございます」といった軽い挨拶から、過去に頂いた話などを持ち出して「あれはどうでした?その後いかがですか?」という話の流れになることが多かったです。
今回の反省のひとつに、選挙前も選挙中にも支援者一同を集める会など開かなかったことがありますね。これは「やらなくてもいいだろう」という気持ちが、私にも私の周りにもあったことがいけなかったです。今までの選挙では開催していましたので……。皆で集えば、人づてに後援会名簿を増やす紹介などもあったと思うんです。そういうチャンスを潰してしまいました。
名簿はどのぐらい集まったのでしょうか?
名簿としては、一期目は1300名、二期目で600名集めましたが、今回は200名ぐらいの集まり方でした。数からも状況がわかりますね。あえて皆さんが名簿を書いてくれなかったのかわかりませんけど、名簿への記入を期待して応援してくれる人のところを回っても「もう私が応援しているのをわかってるかんだら、書かなくてもいいでしょ!」「まだ出すの?」ぐらいの反応なんですね。新人のときとは違う反応ですし、ちょっと頼みづらいですよね。でもそこは「お願いします」と初心を忘れずにお願いし、少しでも書いてもらっていれば、また少し違ったかもしれないですね。
名簿はあったほうがいいと思いますか?
私は、名簿はあったほうがいいと思いますよ。色々なことの理由にできますからね。
こちらから尋ねるときには応援して頂いたことへのお礼やご挨拶として、それから「あなたうちに挨拶にきてくれなかったじゃない!」等と言われてしまったときには「名簿の順番に回っていたので、これからいくところだったんですよ!」という話にもできる。「あなたがうちに来ないから別の人を応援する!」っていう方も中にはいますからね。冠婚葬祭のご挨拶でも役に立ちますね。
選挙区内、全戸を回るのは無理な面もあるので、名簿を頼りに知人を介して、広がりある活動ができるというのも大きいですね。
なるほど、何かどこかで票を落としたのか・・・わかりやすいですね・・・。
選挙用品は何を用意しましたか?
リーフレット、たすき、選挙カーも用意しました。看板類は既に揃っていましたので、それを再利用しました。
選挙用品ドットコムさんでは、リーフレットを用意していただきましたね。
地元での支援が強いイメージですが、今回、選挙用品を弊社に頼もうと思ったのは何故でしょうか?
リーフレットは、数を多く作りたかったので少しでも価格を安く作れるところをと思っていました。地元では少々高かったので、ネットで検索して探し、見積りをお願いしたのが選挙用品
ドットコムさんでした。
それと、今までずっと地元で選挙用品を用意してきたので、全国区で選挙用品を展開している会社だとデザインはどうなるのかな?と興味があったことも、通信販売を選んだ理由のひとつですね。同じ選挙区だと、候補者のほとんどが同じ印刷会社を利用する傾向にありますし、それがあたりまえでもあるんですね。ただ、全く同じではないとはいえ、ある程度同じパターンのデザインになることも多いです。差別化を意識して、色々なパターンを提供している選挙用品ドットコムさんに期待を寄せました。地元で作成しても見せるポイントは同じかもしれないですが、地元とはまた違った仕上がりになって、選挙用品ドットコムさんにお願いして良い経験になりましたね。
毎回用意している選挙用品はありますか?
逆の話になってしまうんですが、今回はいつも用意していた「だるま」を用意し忘れていたんですよ。
だるまがあるとないとでは、違いますか?
違いますね……! なんというか、選挙前後の感触が違うんですよね。選挙用のだるまは大きいですから存在感もありますし、事務所に置いてあると「選挙が始まるんだ」と雰囲気が変わって気が引き締まります。当選後の目入れも、応援してくださった方と喜びを共有できる大事なことです。
次の選挙では忘れずに用意したいですね。
次といえば、今回は写真があまり評判が良くなかったんですね。これも次回は気をつけたいですね。
地元で撮った写真でしたが、そこまで気合を入れずに撮ったというか……。
次回の選挙では、また4年経って雰囲気も変わるでしょうし、新たな準備が必要になりますね。
やらないよりは「やる」!
選挙活動のペース配分は、意識していましたか?
小さい町なので、一日あれば全体を回れるんですよ。ですからペースというのもなかなか作りにくいところがあります。
誰かをみかけたら車に乗っていても降りて寄っていってご挨拶をするということの繰り返しですね。特に中心部から離れたところでは丁寧に活動しました。
他の候補者も同じ道を辿って、日に何度も他の候補者とすれ違うんですね。最短ルートを何度も、というよりは効率的に一人でも多くの方に会えるようにと道を選ぶんですが、みな同じ道路を使いますので、時計回りに行くか、反時計回りを行くか、というぐらいの差しかないかもしれないですね。それでも、やらないよりは「やる」。
少し話がズレますが、ちょうどこの選挙の時期に毎年、選挙区内で大きなイベントがあるんですね。そのイベントをさえぎってまで選挙カーを走らせる必要はあるのかどうか、選挙の時期をずらすことは出来ないのかなど、今後考えていかないといけないですね。
これから出馬する方へ
次の選挙に挑戦する現役議員、初出馬となる方へ、アドバイスやメッセージをお願いいたします。
後援会作りが大事だと思いますよ。
自分一人では何も出来ないんですよ。
まして新人だと、ぽっと行っても「どこの誰?」「暇な人なんだな」と思われるだけで話もしてくれないし、受け入れてくれないです。それは、知り合いと一緒に回ることで、話してくれるきっかけになります。私は二期経験しているので「ああ、あなたね!」とわかってもらえますが、最初は知人を頼りにして顔と名前を広げていきましたよ。誰か紹介してくださいと、その繰り返しですね。
有権者の方は、ほんのささいな事でへそを曲げてしまうこともあります。選挙カーで回っていても「あっちの道路は通ったのに、うちのところには来てくれなかった!」「選挙カーがきたから家から出て行ったのに、走って行ってしまったでしょ!」なんて言われることもあります。でもこれは、気にかけてくれるということで、とても大事なことです。何も言われなくなったときがきたら、それが一番怖いこと。サッと行って握手して「ああ!すみませんでしたー!」なんて挨拶しに行くと、先方もそれを待っているんだと感じますね。こういう意見は絶対に無視をせずに、きちんと対応することが大事です。
それと私、「辻立ち」は売名行為のひとつかなと、あまり良く思っていないんです。名前を
言って、適当に話をしているだけの印象なんですよね。中身がないというんですかね。
けれど、若い人から話を聞くとそれでも「がんばっている」と見えるらしいんですよね。人前に立って、一生懸命にしゃべっていると。それが好印象になり名前を覚えてもらい、票に繋がっているのかもしれないです。これも反省のひとつというか、好む好まないに関わらず、もっと積極的に取り組んでみるべきだったかもしれないと思いました。
票を集めるやり方がある、ということですね。
後援会は維持するのも大変
後援会はたるんでいきます。これは私の今の悩みでもあります。
後援会というのはどういうわけか、年数が経つと動きが悪くなってくるんですね。年々名簿の数も少なくなってくるし、動きも悪くなる、集まることも少なくなっていきます。それでいて私自身の議員年数が増えると、その経験で「大丈夫」という言葉が出てくる。危機感がなくなるんですね。このままでは本当にまずいですよね。
選挙が終わってから「どれだけ政治活動をしても、どれだけ議員活動をしても、それが票に結びつくとは限らないんだよ」と言われたんです。現実問題として、確かにそういう面もあるなぁと思いました。
当選したことにはとても感謝していますし、嬉しいです。ただし、「大丈夫」は、大丈夫ではなく、一番危険な言葉だと身をもって経験しました。私の意識、それから周りの意識を変えていかないといけないですね。
何はともあれご当選はご自身のお力です。おめでとうございます。引き続き、職務を全う頂きたく思います。本日は、お時間をありがとうございました。
【編集後記】
とても貴重な本音のお話でした。関係者に配慮して、今回は匿名での掲載許可を頂きました。
お話を伺いながら「そういえば…」と思い出すこともあったご様子で、具体的な裏話、正直な
お気持ちを耳にして驚くことも多かったです。また、それ以上にこれから議員としてやりたい
事も熱く聞かせて頂きました。Aさんのますますのご活躍をお祈りいたします。
※ 取材日時 2017年春