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![]() 本日は、2009年東京都議会議員選挙に初出馬し、惜しくも落選された、米川大二郎さんのお話をおうかがいします。
― こんにちは。今日はよろしくお願いします。それではまず、米川さんの自己紹介をお願いします。 こんにちは。米川大二郎と申します。平成21年東京都議会議員選挙に、無所属で初出馬しました。 お金も後援会もなく、自転車に乗って自分でポスターを貼ってまわり、はじめての街頭演説にも挑みましたが、残念ながら落選しました。でも、結果以上に多くのものを得て、現在は次の選挙に向けて街頭活動を行う毎日です。 僕のはじめての選挙活動は、最初から最後までひとりきりでした。 自分で選挙管理委員会へ立候補の届出を出し、写真館へ顔写真を撮りにいき、選挙用品店を見つけて、まずはポスターをつくるところからはじまりました。 支援者のいる候補者とはちがって、ビラを大量につくってまいたり、選挙カーで街中を走り回ったりすることはできません。ですから、顔と名前をおぼえてもらう手段として、ポスターはとても重要なアイテムでした。 これが、そのポスターです。 ![]()
― このポスターは、どのようにしてできあがったのですか。
図書館へ行って、過去の選挙記録を借りてきました。 選挙記録には、それぞれの選挙での掲示板の写真を見ることができます。どの位置に、どのようなデザインのポスターが貼られて、その結果がどうだったのかを分析しました。 ポスターの位置はくじ引きですから自分では選べませんが、どんなデザインが効果的なのかは、ある程度の統計がとれました。 それから、街へ実際の選挙ポスターを観察しにいきました。 ちょうど統一地方選挙をやっていたときで、たくさん見ることができました。毎日真剣に見ていると、だんだん目が肥えてきて、良いポスター、悪いポスターがわかるようになりました。 ― 良いポスターと悪いポスターはなにが違うのですか。
逆に、顔も名前もまったく印象に残らないポスターもあります。そういうのは、悪いポスターですね。 配色やデザインの本も、たくさん読みました。表情や、顔のサイズを分析した図を見て勉強したり、視覚障害によって見える色と見えない色がある、ということも知りました。 分析の結果、僕には、青と黄色、そして白を使うのがよいという結論になりました。 ― 実際につくられたポスターについて、くわしく解説していただけますか。 ![]() まず、「米川」という名前を大きくしました。 そして、顔写真を同じく大きく配置。写真の背景はあえて白にしました。顔の両サイドに同じ分量だけ白が見えるように配置するのが、顔写真を印象付けるコツです。 このポスターは、中央で色が分かれているように見えて、左側がほんのすこし幅広くなっています。漢字は視覚的に残りづらいので、できるだけ幅をとって大きくしたかったのです。 ◆写真について この顔写真は、選挙ポスターの撮影を専門的にやっているスタジオで撮ったものです。 ポスターの前に僕本人が並んで立ったとき、「同じ人」でなければなりません。表情はもちろん、服装も慎重に選びました。 ◆服装について
インターネットでカラーコーディネーターを探して、肌の色や、瞳の色、血の流れにあわせて、僕に最適な組み合わせを選んでもらいました。 選挙活動中は、ポスターとまったく同じ服装で過ごしました。そのほうが印象づけやすいからです。 赤の斜めストライプのネクタイは、実はバラク・オバマ大統領とおそろいなんです。大手スーパーの紳士服売り場で3本まとめ買いをして、毎日、交代で使っています。 ◆表情について
笑顔が苦手だったので、練習したんです。 僕、真顔になると、口元が「へ」の字型で気難しく見えるんです。 それで、毎日、口角をあげる練習をしました。インターネットでアイドルの笑顔写真を見て笑顔を研究しましたよ。 こんな具合で、僕にとっての最強のポスターはできあがりました。 はじめて、仕上がったものを目の前にしたときは「おっ、スゴイ!」という感動とともに、いよいよこれで戦わなければいけないんだな、という決意を新たにしました。
― そもそも、米川さんは、いつごろから選挙活動をはじめられたのですか。 今回の都議選がまったくはじめてです。立候補してから、はじめてポスターを貼ったり、街頭演説をしたりしました。それまでは、もちろん政治には興味はありましたが、事前活動はおろか、選挙に自分が出るなんて考えさえありませんでしたから。 ― では、選挙に出ようと思ったきっかけは、なんだったのですか。 直接のきっかけは、平成19年の東京都都知事選でのゴタゴタを見たことです。 各党の候補者がなかなか決まらず、こんなことで、本当に都をよくすることができるのか? と疑問に思いました。無名の僕のほうが、やらなきゃならないことをよくわかってるぞ、と。 僕は、元東京都職員なんです。都庁に11年間勤めましたが、役所のおかしな体制に疑問を感じて辞職したという経緯があります。知事や議員が、もっと役所を変えていかなければならないと実感しています。 ― 米川さんの体験した「役所のおかしな体制」を差し支えのない範囲で教えてください。 たとえば、所内が禁煙なのに、上司が平気でタバコを吸っている、なんてことがありました。でも、誰もなにも言わないんですよ。見て見ぬふり。だから僕、面と向かってその上司に注意したんです。そうしたら、平然とした顔で、こう言い返されました。 「米川くん。じゃあ聞くけど、キミは、なにひとつ悪いことをしないのかい?」 結局、立場の低い人間は、いくら正義感があっても空回りする世界なんです。だからこそ、こういった役人と対等か、それ以上の立場から意見のできる、議員になりたい。選挙に出ようと思ったのは、こんな理由からです。
― 実際に、都議選に出馬するまでの経緯をおしえてください。 実は、都議選の前に、都知事選に出ようと本気で思っていたんです。 政見放送用の5分程度のスピーチ原稿を書いて…地図で投票所を調べて、ポスターが貼れる場所をチェックしたりもしました。でも、都知事選は供託金が300万円と高くて。 しばらくは、宝くじに当たったら都知事選に出よう、なんて思って、毎週のようにスクラッチを買って、娘と一緒になって削っていました(笑) その後、都議選の区の広報が目に飛び込んできたんです。供託金は60万円と比較的お手ごろ。よし、ひとつ挑戦してやろうと思いました。 ― 出馬を報告したときの、周りの方の反応はいかがでしたか。 知人は、ことごとく信じてくれませんでした。「ああ、そう。出るんだったらあとでポスターちょうだいね〜」などと、かるくあしらわれる始末です。 ある知人には、「ばかなこと言ってないで、まじめに働け!」と説教されました(苦笑) それでまず、本気だということを見せるために、昼間、仕事そっちのけでポスターのデザイン案を作りはじめました。 妻に見つかり「あんた、なにやってんの?」と声をかけられ、怒られるかと思いました。でも、妻は「やりたいなら、やってみれば」と応援してくれて…ありがたいですね。 それから、本格的な準備がはじまりました。
― 出馬を決めた時点で、米川さんは、選挙についてどの程度の知識をお持ちでしたか。
妻は、応援はしてくれますが、働いていますから、実際になにかやれるわけではありません。まったくひとりでの戦いでした。 参考になったのは、川崎市議補欠選挙の映画「選挙」です。 この映画がなかったら、出馬できなかったかもしれないぐらい、参考になる情報が詰まっていました。 この映画の題材は、少人数での組織選挙です。都議選にとても似ているんです。 実際に、候補者がどういう活動をしているのか、街頭演説の様子、そこに出てくるポスター、たすき、のぼり旗、握手したときの通行人の反応…。 一時停止したり、巻き戻したりして、隅々まで分析しました。20回は見たと思います。 そして、必要な選挙用品をリストアップしました。
― リストアップしたのは、どのような選挙用品でしたか。 ポスター、選挙公報、たすき、のぼり旗。そして、ホームページ、ブログですね。 ビラをまいたり、選挙カーに乗ったり、もっといろいろな方法がありますが、なにせ僕にはお金がありませんでしたから。 それに、選挙用品がいくら豊富にあっても、僕はひとりです。組織を持っている人と同じ戦い方はできません。あれもこれもと一斉に手を出すのではなく、必要なものだけに集中して、いいアイテムを作ろう、そう思いました。 ― 逆に、米川さんにとって、不要な選挙活動はなんでしたか。 一番いらないのは、演説会ですね。 立候補する前に、いろんな人の演説会を偵察したんですが、ほとんどのものは、街のみなさんを集めて演説しているのではありません。後援会の人が集まって「ご支援お願いします!」「がんばれよ!」とやる決起集会なんです。 そんなもの、僕がやっても、家族と近所のおばちゃん2〜3人しか来ませんよ(苦笑) まず僕に必要なのは、ポスター。これがなければはじまりませんから。 そして、選挙公報、ホームページ、ブログに自分の政治理念や考え方をしっかりと蓄積していくこと。そして、見てくれた方の記憶に残っていけたらいいという考えです。
― 選挙用品はどのように選びましたか。 まずはネットで、選挙用品を扱うお店がないか調べました。たくさんの用品店がありましたが、そのなかで、選挙用品.com が自分に一番合っていると思ったのでお願いしました。 ― なぜ、選挙用品.comが合っていると思ったのですか。 ポスターの提案が一番よかったんです。キャッチフレーズやデザイン面で、綿密に相談にのってくれましたから。ほかのお店は、パターン化されたデザインしかなかったり、そもそも印刷しかしてくれなくて、データの準備は自分でやらなければならなかったりしました。 選挙用品.comの田村さんの、「僕は、この仕事に命かけてます」という言葉にも胸を打たれました。都議選は、僕にとっても人生をかけた出馬でしたから。 僕の政治活動の命であるポスターを、ぜひ田村さんと一緒に作りたいと思いました。 ![]()
― さあ、いよいよ出陣です。選挙活動は、まず最初に、なにからはじめましたか。 まず、選挙管理委員会に立候補の届出をして、建物から出たその足で、目の前にある区役所の掲示板に一枚目のポスターを貼りました。 そして、そのポスターの前で、メガホンを持ち、はじめての街頭演説をやりました。 ― はじめての街頭演説はいかがでしたか。 それが…かっこつけて原稿なしでやろうとしたら、しどろもどろになって「あ、あうあうあ…」と変な声が出てしまって(笑) あわてて原稿を取り出して、読みながらやりました。 ― 緊張しちゃったんですね。周りの方の反応はいかがでしたか。 近くにバスを待つ人の列があったのですが、僕が変な声を出したので、いっせいにふりかえって「なんか、はじまっちゃったよ…」という顔で見ていました。 その場は、なんとか勢いでやりきりましたが、「あ〜、ついにやっちゃったあ…」という気分になりました。 僕、実は、どうすればいい演説ができるのかと考えて、通販番組の「ジャパネットたかた」を毎朝欠かさず見て、しゃべり方の研究をしたんです。 同じ商品でも、話し方、抑揚、手振り、イントネーションの違いで、売れ行きが違う。なにかヒミツがあるはずだ、と思って分析したんです。 でも、人生はじめての演説で、いきなりはうまくいきませんね(笑) そのあと、自転車にのって地図を持ち、区内の掲示板431箇所にひとりでポスターを貼って回りました。
― 431箇所にひとりで? それはすごいですね。ところで、なぜ自転車で活動したのですか。
でも、自転車のほうが顔を覚えてもらえるだろうし、ポスターを貼って、その場で演説をしてまわったらおもしろいんじゃないかな、と思いまして…。 でも、実際にやってみたら大変でした。 持ち物も多いですし、まず、自転車がいきなりパンクしちゃって。娘を保育園に送っていたときの古い自転車ですから、仕方ないんですけどね。 一番心配だったのは、天候です。雨が降ったらどうしよう…と。 ― 選挙活動中、雨は降ったのですか。 初日の晩に降りました。雨対策として、雨ガッパとビニールカバーを持っていたのですが、移動よりも、ポスターを貼る作業が大変なのです。降りはじめてすぐにその日は活動をやめてしまいました。 翌日からは、運良く天気の良い日が続いたので助かりました。 のぼり旗がたてられるように、傘入れなどを使って自転車を改造した
― 活動中、ほかの候補者と出会うことはありましたか。 よくすれ違いました。みなさん、支援者がいるから、自分でポスターを貼ったりメガホンを持ったりすることもなくて、ラクでいいなあとちょっとうらやましくなりました。僕、選挙活動中の写真も残っていないんです。撮ってくれる人がいませんでしたから。 でも、ライバルでありながら、不思議と敵対心みたいなのはないんです。 とくに選挙カーの候補者とすれちがうと、マイクで「米川さん、がんばってください!」と声をかけてくれたりするんです。なかには、自分の演説を急にやめて、「あっ、米川候補者、がんばってください!」と手をふってくれる方もいました。 みんな戦っているけど、そういうやさしさがいいなと思いました。良き戦友ですね。
― 選挙活動中、つらくなることはありましたか。 それが、つらいと思ったことはないんです。やっぱり、やりたいことを好きなだけやれていたからでしょうね。あの9日間をやるために準備をしていたんですから。 強いて言えば、テンションを上げないと人前で演説はやれない、ってことですね。毎朝出掛ける前に、気持ちを高ぶらせるために、仮面ライダー電王の「クライマックスジャンプ」という曲を、3〜4回、大音量で聞いていました。
― 選挙活動中、トラブルや困ったことなどはありましたか。 直接のトラブルではありませんが、選挙妨害をまのあたりにしてびっくりしました。 街頭演説などをしていると、候補者に向かって野次を飛ばしたり暴れたりして、逮捕される通行人がたまにいるんです。幸い、今回、僕はそのような目にあいませんでしたが、もしもそういうことがあった場合、ひとりきりで活動していると誰にも助けてもらえないし、ちょっと怖いなと思いました。 それから、これは自分の無知でしたが、警察から電話が…。 初日、写真と名前の入ったのぼり旗を自転車に取り付けて移動していたのですが、これが選挙違反にあたると怒られました。選挙カーなら、名前と写真を掲示してもよいのですが、自転車は車両ではないから、ダメらしいです。 言われて、よくまわりの候補者を見てみると、みんな移動中ののぼり旗は名前じゃなくて「本人」って書いてあるんですよね。次の選挙のために、さっそく選挙用品.comで発注したところです。 ![]()
― 9日間の選挙戦の結果、米川さんは落選してしまいました。その時の心境、おうかがいしてもよろしいでしょうか。 正直、ショックでした。てっきり当選すると思い込んで、ウキウキしながら自宅でNHKの出口調査を見ていたんです。葛飾区、と出たとき、円グラフが画面に出て…自分の投票数はほんのすこししかありませんでした。あららら〜と思って……そのまま布団をかぶって不貞寝しました(苦笑) 夜中に、知人からはげましの電話をもらってすこし元気を取り戻しましたが、その後、一週間近く、どうしてだめだったのかな、と悩みました。
― 今回の都議選をふりかえって、なぜ、だめだったのだと分析されますか。 政治活動としての露出が、圧倒的に足りませんでした。なんの事前活動もなしに、いきなり立候補したので当然です。 今回の夏の衆議院選挙では、静岡7区で4年間ずっと辻立ちした無名の候補者が、当選しました。名刺をくばったり、演説したり、地道に活動していたようです。そのなかで、本当に応援してくれる後援者ができて、圧倒的な強さで当選したのです。 やはり、どんどん選挙区の中へ出ていって、顔と名前をおぼえてもらうことは大切なんだと痛感しました。 今回の都議選の僕の得票数は、8023票でした。たしかに、当選はできませんでしたが、まったくの無名の新人が初出馬して、8023人もの方から票を得られるなんて、本当にありがたいことだと思えます。 たくさんの候補者がいるなかで、わざわざ僕を選んで投票してくれたのです。僕のホームページや街角での地道な演説活動を、じっくりと聞いてくださった方がそれだけいたということです。 この結果は、次回への自信につなげよう、そう思いました。
― これから初出馬しようと考えている読者に向けて、アドバイスなどがありましたらお願いします。 まず、過去の選挙結果のデータを収集して、選挙区の分析を行なうことですね。 やみくもに出ないで、自分はどういう候補者だから、どう戦うべき、など把握したほうがいいと思います。 それから、自分への課題としてもお話ししましたが、やはり街にはどんどん出て行ったほうがいいですね。事前活動は大切です。街には、候補者の話を聞きたがっている人は必ずいます。そういう人のためにも、こまめにまわるべきだと思います。 あとは、自分が、自分の住む街でどう生活していきたいか、そのためには行政がどう変わればいいのか、という思いがあれば。やる気があるなら、迷わず思い切って出馬してください。
― 今後の選挙活動についてお聞かせください。
今回の落選によって、僕はたくさんの課題に気づかされました。何事も同じですが、やっぱり、実際に行動してみないと、何が良くて何が悪いのかはわかりません。思い切って出馬して本当によかったし、落選はまったくムダなことではなかったと思えます。 今回の僕の選挙は、「冷たい選挙」だったと思います。事前活動なし、データだけを分析して、「ポスターを見て投票してくださいね」と言っているようなものでした。 でも、街のみなさんは、あたたかかった。自転車で走っていると、笑顔で声をかけてくださる方、車道からわざわざクラクションを鳴らして「がんばれよ!」と応援してくださる方。都庁時代の同僚からも「よくやった!」と電話があって…いまお話ししていても涙が出るほどうれしかったです。 9月から、区内をまわりはじめたんです。「この間も出てたね」と声をかけられるようになりました。 次回は、「あたたかい選挙」にしたいと思っています。 そして最後に、選挙用品.comさんに厚く御礼申し上げます。次回の選挙でも、よきアドバイスをよろしくお願いいたします。 |